クリード チャンプを継ぐ男 ロッキーの魂を引続男

あらすじ

 ボクシングのヘビー級チャンピオンであったアポロ・クリードの息子、アドニス・ジョンソン。多くの伝説を残したアポロだが、彼が亡くなった後に生まれたためにアドニスはそうした偉業を知らない上に、父との思い出もなかった。荒れていた少年時代にアポロの妻、メアリーに引き取られ立派な青年へと成長する。やがて証券会社で勤め始めたアドニスだが、彼の心の中には亡き父を慕う心が燻っていた。そしてボクサーになることを夢見て、父のライバルだったロッキー・バルボアを訪ねトレーナーになってほしいと申し出る。
 ロッキーはアドニスからアポロの名を聞いて動揺するものの、彼の申し出を断った。老年にさしかかり、最愛の妻であるエイドリアンを亡くし無気力に生きていた彼にはアドニスの申し出は重荷だったのだ。仕方なく別のジムでトレーニングを始めるアドニスだったが、やはり父の影が心をかすめ、自分の居場所はここではないと再びロッキーを訪ねたのだ。

見どころ

ロッキーシリーズの七作目としてつくられたスピンオフ作品。1976年に生まれたロッキー・バルボアというキャラクターがここまで生き続けることは驚きではあったが、ロッキーシリーズを見てきた者からすれば、ややハングリーさにかけるという印象。アドニスをロッキーの後継者として見ると物足りなさはあるが、生きる希望を失っていたロッキーが彼と出会うことによってどう変わるのか、一人の男の人生の続きを見られることは単純に興味深い。

感想

ロッキーがアドニスを鍛えているシーンではどうしても昔のロッキーを重ねてしまう。わずかな報酬で賭けボクシングをしていたどん底生活のロッキーと、メアリーに引き取られ何不自由なく育ったアドニスではボクシングに賭けるものが違う。泥臭さ、ハングリーさが圧倒的に足りない。
ストーリー展開は過去のロッキーの焼き直しとも言える。さらにかつての栄光を隠し生きる老年の強者と負けん気の強い若者という構図は「ベスト・キッド」でタッグを組んだジャッキー・チェンとジェイデン・スミスそのまま。重厚ではなくともせめて新しいヒーロー像となりうる鮮烈な印象を残せればよかったが、アドニスはそうはなりえず、結局はロッキーの存在感のほうが際立ってしまう結果となった。
主人公アドニスは生い立ちこそ不幸かもしれないが、アポロの隠し子だからとメアリーに引き取られてからは学歴にも仕事にも恵まれて幸せに暮らしている。なぜボクシングをしなければならないのかの理由づけも曖昧で、おまけにあっさりと恋人もできてしまうと、ロッキーが不屈の精神でリングに立ち続け愛する人の名を叫んだ「ロッキー」と否が応でも比べてしまう。
アドニスが勝たねばならない理由もわからず、負けたところで何を失うのかもわからず、観客にとって彼の勝敗の行方が興味のないものとなってしまったのが最大の敗因だろう。
だがアドニスと最終ラウンドで見た幻のアポロを見た瞬間、往年のファンは歓喜したのではないだろうか。そこから流れ出す「ロッキー」のテーマ曲。この瞬間のための前半と言っても過言ではない怒涛の最終ラウンド。そしてアドニスをセコンドから見守るロッキーを見て、年を取ったなと感慨深い気持ちになる。辛苦と苦悩の果てに愛する人と人生を勝ち取ったロッキー。自分の身は自分で守るしかない生き方をしてきた彼が得た安息の地であるエイドリアンさえも失い、疲れ果て、たどり着いた先にいたのはかつてのライバルの息子だったのは皮肉だが、過去を過去にできるほどの時間が流れたのだと胸が熱くなった。最後の彼の選択が彼の人生を安らかなものに導いてくれると信じられる温かな余韻を残したスピンオフ作品だった。